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2024/09/19 23:25 |
「ターミナル」

飛行機から降り、入国審査を受ける男性。

「あなたの国でクーデターが起き、あなたは無国籍になりました。」

言葉も通じない空港で、男はニューヨークに行くために待ち続ける。

彼が待ち続けたのは何か。

トム・ハンクス主演、スティーブン・スピルバーグ監督「ターミナル」。

映画館で観るはずが、なぜか釧路の実家で観ることになりました。

「最後の恋のはじめ方」を借りたかったのに、2回行っても貸し出し中だったので、「ターミナル」でもと。

観る気分ではなかったけど、観てよかった。

 

 トム・ハンクス演じるビクターが、入国審査を受けるシーンから始まるのだけど。

言葉もわからず、ただパスポートと入国許可証を出し、警備員に捕まる。

祖国でクーデターが起きたことも、無国籍になっていることも、帰ることも行くこともできずないことを

説明されても何もわからず、”yes”とだけ答える彼の不安がとてもわかって、胸が苦しくなる。

ニュースは「見る」ことはできても「聞く」ことができず、何が起こっているのかもわからず、

電話のかけ方もわからず、もらったクーポンも捨てられてしまい、守られない「アポ」を信じる彼が

やけにリアルで観たことを後悔してしまった。

だけど、彼はただ「待つ」。

約束を果たすために。

信じて、待つ。

 

ただ待つだけなら誰にでもできるかもしれない。

けれど、待つ間に彼が取った行動。

言葉も通じず、誰も助けてくれない、空港という監獄の中で、彼は生きる。

はじまって数分のシーンで、彼がベンチに寝そべってピーナッツの缶を大切そうに見つめる場面。

何が入っているのかはわからないけど、その仕草に感動した。

 

 話の内容としては、彼がニューヨークに行きたい理由etcが謎のまま話は展開するのだけど、

それがわかった時は「それだけ?」と思った。

とても暖かい理由だったのだけど、なんだかあっけない気がして。

でも、彼が空港にいる間に起こること、起こすことよりも、ビクターという人を描いた映画なのだと思った。

トム・ハンクスの演技はもちろん素晴らしくて、ちょっとした仕草にもビクターという人柄はこういう人なんだって

わかるのだけど、彼を取り巻く人々。

とりわけグプタ・エンリケ・マルロイの3人の、細かいキャラクター作りにびっくりする。

グプタは、頭のイカれたいじわるな人かと思っていたけど、なぜあんなにCIAに拘っていたのか、

わかった時にはもちろん納得したし、最後のシーンではあんなに拘っていたものを捨ててまでした彼に

とても感動した。

一番泣いたシーンだと思う。

エンリケはただのアホ男だと思っていたら、本当にイイ奴で、なぜトーレスがあんなに素直に受け入れたのか

納得がいく。

マルロイは最後まで、真面目で文句のつけようがない人なんだって、ディクソンの書類でもわかったし。

アメリアとの食事で、この3人のキャラクターがよく出ているなと、思わず笑えるシーンだった。

 

 最初のほうで、私は不安になって、もしかしたらこの映画はとても暗い話なんじゃないかと思って

観るのをやめてしまいたかったのだけど。

もちろん、イイところでいじわるなディクソンに邪魔されたり、「なんでよ?!」と思うところばかりだったけど、

やっぱり、トム・ハンクスの一人演技(と私は思っている。)では、どこか軽くて笑えるものがあって、

重い空気にならないのがすごいなと思った。

重い話は嫌いじゃないけど、今は正直あまり気分は良くならない。

例えば、仕事を探している時に、次々に断られ、最後のショップの店長からの電話で「いい加減にしてよ!」と

思ったけれど、それを笑いに変えられるところが、この話のいいところだと思う。

空港に閉じ込められ、出ることも帰ることもできず、食べ物は買えず、お風呂にすら入れない無国籍人間

という状況で、前向きにひたむきに、諦めず信じ続け、約束を果たすために待つことができるビクター。

私には「そんなこと?」な約束は、彼にとってはこの状況に立ち向かうくらいの力があったということ。

ピーナッツの缶を、大切そうに見つめるビクターで、それはわかるのだけどね。

 

 

 素敵な映画でした。

また観たいと思う。

今度は、違うものがきっと発見できるはず。

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2006/10/13 01:34 | Comments(0) | TrackBack() | 映画

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